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プロジェクトの成功率を上げるフィジビリティスタディとは?【解説】

【解説】フィジビリティスタディとは?

大きくて複雑なプロジェクトを運営するのは、刺激的ですが、失敗のリスクも伴いますね。
そこで、プロジェクトの実行可能性を事前に調査する「フィジビリティスタディ」が役立ちます。

この記事では、フィジビリティスタディの内容や進め方を紹介します。
プロジェクト管理でこの方法をまだ使ったことがない方は、ぜひ参考にしてみてください。

フィジビリティとは?

「フィジビリティ (feasibility)」とは、実行できるかどうかを示す英語の言葉です。
日本では「フィージビリティ」とも書かれます。
ビジネスの世界でよく使われ、事業計画や新しいプロジェクトの実行可能性を調べる時に重要な要点として挙げられます。

フィジビリティの歴史

1933年、アメリカのテネシー川流域開発公社が、世界で初めてプロジェクトの「実行可能性」に注目しました。
この公社は、世界恐慌で困っている労働者を助けるために設立され、ダム建設などの大きな事業を進めました。
その時、計画が本当に実現できるかどうかをしっかり調査したのです。

フィジビリティスタディとは?

フィジビリティスタディとは、事業やプロジェクトがうまくいくかを判断する調査のことです。
この調査で、プロジェクトの実現性や実用性をチェックし、それをもとにプロジェクトを進めるか決めます。
これは「実現可能性調査」や「実行可能性調査」とも呼ばれます。

フィジビリティスタディを行うには?

フィジビリティスタディを始める際、以下の2つのポイントを確認することが大切です。

  • ① チームは、プロジェクトを進めるための必要なツールや資源を持っているか?
  • ② このプロジェクトからの収益は、投資する価値があるのか?

特に、ビジネスで高額の投資が必要なプロジェクトや、会社のブランドや評価に影響を及ぼすようなプロジェクトでは、このスタディは欠かせません。

フィジビリティスタディのメリットは?

フィジビリティスタディのメリットは以下の通りです。

  • 市場のチャンスをプロジェクト開始前に把握
  • 事業の方向性を明確にする
  • 提案内容の良い点や悪い点を明文化
  • プロジェクトを進めるべきか、十分な情報を持って判断する

プロジェクトマネージャーは直接このスタディを行うことは少ないかもしれませんが、その内容を理解することは大切です。
スタディを行うチームをサポートし、プロジェクトを成功へと導くためには、この知識が役立つでしょう。

フィジビリティスタディはいつ行う?

フィジビリティスタディは、プロジェクトの詳細を決定する前の段階で行う調査です。
このスタディは、プロジェクトの計画段階に含まれ、多くの場合、SWOT分析やリスク評価と一緒に進められます。

しかし、以下のような状況では、フィジビリティスタディをする必要は少ないでしょう。

  • 既にプロジェクトが実行可能だとわかっている
  • 以前と同じタイプのプロジェクトを実施した経験がある
  • 同業他社が同じ取り組みで成功している
  • プロジェクトが小規模で単純、または影響が少ない場合
  • 過去3年以内に似た調査をすでに行った

では、プロジェクトピッチやプロジェクト憲章、ビジネスケース、ビジネス計画などと絡む場合、フィジビリティスタディはどのタイミングで行えばいいのか?

以下のようにまとめます。

  • プロジェクトピッチとフィジビリティスタディの関係
  • プロジェクト憲章とフィジビリティスタディの関係
  • ビジネスケースとフィジビリティスタディの関係
  • ビジネス計画とフィジビリティスタディの関係

プロジェクトピッチとフィジビリティスタディ

プロジェクトピッチは、提案されたプロジェクトが自社の戦略に合致しているか、また良いアイデアかどうかを判断する段階です。
このピッチの後、フィジビリティスタディで、実際にそのプロジェクトを現有のツールやリソースで実行できるかを検討します。

プロジェクト憲章とフィジビリティスタディ

プロジェクト憲章は、プロジェクトの概要や目的を簡潔に説明するインフォーマルな文書です。
これを「エレベーターピッチ」のように短時間でのプレゼンと考えてください。

通常、この憲章は経営陣やプロジェクトスポンサーがプロジェクトを承認する前に確認します。
承認された後、フィジビリティスタディでそのプロジェクトが実際に実現できるかを調査します。

ビジネスケースとフィジビリティスタディ

ビジネスケースは、プロジェクト憲章をより正式にしたものです。
小さなプロジェクトではプロジェクト憲章で十分ですが、ビジネスに大きな影響を持つ複雑なプロジェクトでは、財務情報などの詳細を含むビジネスケースが必要です。
この文書は、主に企業の高位の関係者が参照します。

ビジネスケースが承認されると、フィジビリティスタディでその内容が実現可能か確認します。
もし実現が難しいと判断されれば、必要なリソースや時間の追加を経営層に申し入れることになります。

ビジネス計画とフィジビリティスタディ

ビジネス計画は、会社の目標を正式にまとめた文書です。
新しい会社を立ち上げる時やビジネスの大きな転換点で作成します。
この計画は、通常3年から5年先までの戦略を示し、ビジネスの重要な判断を導きます。

このビジネス計画を実現するためには、様々なプロジェクトへの投資が必要です。
その際、フィジビリティスタディを行うことで、各プロジェクトの実行が実際に有効かどうかを調査します。

フィジビリティスタディの 4 つの要素

フィジビリティスタディは、4つの大きなポイントから成り立っています。
それは技術的な実現性、経済的な妥当性、市場の適合性、そして実際の運用上の可行性です。
これらを「4つのフィジビリティ」とも言います。
多くのフィジビリティスタディは、これら4つのポイントを全て調査する形で行われます。
4種類のフィジビリティスタディ

  • 技術的フィジビリティ
  • 財務的フィジビリティ
  • 市場でのフィジビリティ
  • 運用面でのフィジビリティ

技術的フィジビリティ

技術的フィジビリティスタディは、プロジェクトを実現するための技術的な準備やリソースが整っているかを調べるものです。
これは、適切な設備や必要な機器、そして必要な技術的知識が手元にあるかどうかを確かめるためのものです。
例えば、月に5万個の商品を生産したいと考えても、工場の現在の能力が月に3万個しか作れない場合、そのプロジェクトは技術的に無理があると言えます。

財務的フィジビリティ

財務的フィジビリティは、プロジェクトが経済的に実現可能であるか、つまり利益を生むかを判断するためのものです。
この報告書には、プロジェクトの予算や収益に関する分析が詳細に記載されています。
さらに、どれくらいの収益が期待できるか(ROI)や、関連する財務リスクも評価します。

要するに、このスタディの目的は、プロジェクトが経済的にどれだけ有益であるかを把握することです。

市場でのフィジビリティ

市場でのフィジビリティは、プロジェクトの成果が市場でどれくらい受け入れられるかを見るためのものです。
この報告書には、市場の状況や競合の情報、そして売上の見込みなどが記載されています。

運用面でのフィジビリティ

運用面でのフィジビリティは、組織がプロジェクトを無事に終わらせることができるかを調べるものです。
この中で、必要な人員、組織の形態、そして法的な要点を考慮します。

このスタディを終えたら、プロジェクトを成功させるための必要なリソースやスキルが揃っているかがわかります。

フィジビリティスタディのチェックリスト

フィジビリティスタディは大体同じ内容で作られることが多いですが、しっかりとしたスタディを作ることで、プロジェクト関係者の意思決定がとてもスムーズになります。

フィジビリティスタディには次の要点が含まれます。

  • プロジェクトの全体的な実行可能性を記述したエグゼクティブサマリー
  • このプロジェクトで開発される製品またはサービスの説明
  • 技術、設備、人員配置などの技術的な検討事項
  • 現在の市場とマーケティング戦略の研究を含む市場調査
  • チームの現在の組織構造がこのイニシアチブをサポートできるかどうかを評価する運用面でのフィジビリティスタディ
  • プロジェクトのタイムライン
  • 財務的フィジビリティレポートに基づく財務予測

フィジビリティスタディの進め方: 6 つのステップ

フィジビリティスタディを自分でやることは少ないかもしれませんが、アドバイスや情報が必要とされることはよくあります。
スタディを進めるためには、専門家のコンサルタントを採用するか、もしくは社内のプロジェクトマネジメントオフィス (PMO) に依頼するのが良いでしょう。

通常、作業は次の手順で行われます。

  1. 事前分析の実施
  2. 財務的フィジビリティの評価
  3. 市場評価の実施
  4. 技術的および運用面でのフィジビリティの検討
  5. プロジェクトの脆弱性の見直し
  6. 決定事項の提案

1. 事前分析の実施

フィジビリティスタディは、かなりの時間を要する作業です。
そのため、調査を開始する前に、プロジェクトに明らかな問題点が無いかを確認しましょう。
例えば、組織の予算を大きく超える金額が必要なプロジェクトは、進行が難しいかもしれません。

また、特定の日に市場でのリリースが必要なのに、実際のリリースが数ヶ月後となる場合、そのプロジェクトは実行が困難です。
このような明確な問題がある場合、フィジビリティスタディを行う必要はありません。

2. 財務的フィジビリティの評価

財務的フィジビリティスタディは、プロジェクトの「見込み収支」のようなものです。
この調査では、プロジェクトからの収益予測や、目標を達成するための必要な時間や資金投入を示します。
また、このプロジェクトが会社の収支にどう影響するかを検討します。
プロジェクトの大きさや複雑さに応じて、社内の専門チームや外部の専門家と財務部門が連携して、投入資金に見合った価値が出るかどうかを分析することもあります。

3. 市場評価の実施

市場評価や市場のフィジビリティスタディは、市場のニーズを見極めるための調査です。
このステップで、期待されるプロジェクトの収益や、市場でのリスクを知ることができます。

この調査の中心は、市場にどれだけのビジネスチャンスがあるかを確かめること。
競合との位置関係や、人口動向のデータを調べて、プロジェクトが市場でどれほど受け入れられるかを掴むのがポイントです。

4. 技術的および運用面でのフィジビリティの検討

たとえお金が十分で、市場が受け入れてくれる状態だとしても、組織自体がプロジェクトを進める準備ができていないかもしれません。
そのため、必要な人数や機材、そして組織が持っている時間や資金、スキルなどのリソースを確認することが大切です。

さらに、プロジェクトの内容によっては、法律の面も考慮することが必要です。
例えば、新しい特許を取得するプロジェクトの場合、法務の専門家を巻き込んで、プロジェクトの計画を立てることが求められます。

5. プロジェクトの脆弱性の見直し

ここまで来ると、社内のPMOや外部の専門家は、フィジビリティスタディの4つのポイント(財務、市場分析、技術的フィジビリティ、運用面でのフィジビリティ)をすべて確認します。

次に、実行に移す前にデータの整合性や矛盾をチェック・分析します。
たとえば、損益計算と市場のデータが合っているか、技術的な問題がないかを見ます。
問題があれば、備えとして計画を立てます。

プロジェクトによっては、一つの明確な答えが出るわけではないこともあります。
フィジビリティスタディは、単純な「良いor悪い」の答えを出すものではなく、プロジェクトの方向性を決めるための参考資料として役立てられるものです。

6. 決定事項の提案

フィジビリティスタディの最後のステップには、重要な点をまとめたエグゼクティブサマリーがあります。
プロジェクトの内容や大きさによって、社内のPMOや外部の専門家が、このスタディを関係者に共有したり、実際に会議でプレゼンして意見を求めることも考えられます。
フィジビリティスタディがあることで、チームはより詳しい情報をもとに適切な判断ができるようになります。

【まとめ】フィジビリティスタディでプロジェクトを成功に導く

「フィジビリティ」とは、ある計画やプロジェクトが実行可能かどうかを評価することを指します。
ビジネスの現場でよく行われるフィジビリティスタディは、そのプロジェクトの実現可能性を検証するための調査です。
どんな要素を確認し、いつ、どのように進めるべきかを説明しました。

このスタディは、ビジネスの成功のために不可欠なステップです。
計画を立てる際には、しっかりとこの調査を実施することをおすすめします。